導入事例

検査のデジタル化と自動判定により属人化を解消し、データ活用型のリスク予防体制を構築

労働力の減少と人手不足、コロナウイルスの流行と人々の生活変容など、次々と食品事業者様を取り巻く環境に変化が生じています。不安定な事業環境でも継続的に成長するためにデジタル化や自動化の推進は必須と言われていますが、どこから取り組むべきか悩まれる方も多いのではないでしょうか。
検査業務のデジタル化・自動化に取り組み、業務の効率化と迅速化を実現された株式会社食研 土屋様より、具体的な取り組み方法や導入効果について、お伺いしました。

土屋邦昭 様

株式会社食研
執行役員 品質保証部長

検査業務の属人化・試験結果のばらつきが課題

――株式会社食研様には、2020年1月よりペトリフィルム™ プレートリーダー アドバンスト(以下、PPRA)を導入していただきました。そのきっかけは、ISO 22000の認証取得だったそうですね。

認証取得の準備をきっかけに各種の検査を見直し、検査数が増加しました。さらに同時期に製造量や品目、細菌検査の数も増えました。検査日数が多くなり、検査員が土日出勤や残業で対応する状況になっていました。
超過勤務の背景には、検査数の増加以外の要因もありました。検査数の増加と同時に担当者が異動になり、新人教育をしながら業務対応をしていたのです。当時の検査業務はかなり属人化しており、担当者の異動前よりも一層時間がかかってしまう環境でした。担当者は2名。培地の目視判定で、コロニーのカウントのばらつきを防ぐため、2回判定を実施するなど手間がかかっていました。そのため、省力化を可能にし、試験結果のばらつきを防ぐ自動化機器には、とても期待をしていました。
使ってみると、数秒でコロニー数を読み取り、簡単に検査結果をエクセルシートに転記できる点には大変惹かれましたね。作業時間の短縮や転記ミスの防止にもつながると考えました。

稟議の際にはメリットを数量化し提案

――PPRAの導入案は経営層からも好評だったと伺いました。品質管理に通じていない方もいらっしゃるなか、どのような点が評価されたのでしょうか。

経営陣への稟議の際には、メリットを数量化して提案しました(図1参照)。当社では伝達の際に数量を明確にして伝えることが重視されています。結果的に、訴求したポイントはすべて経営陣の課題とも合致していたようです。
検査や記録における様々な点が改善できるので、多くのポイントを訴えることができ、場を前向きな雰囲気にすることができました。「やらない手はない」という反応でしたね。
判定の精度については、目視カウントとPPRAのカウントの相関を確認していきました。検証の際には、実際の業務担当者に導入の背景と導入後のイメージをしっかり説明し、懸念についても良くヒアリングして臨みました。そのうえで、具体的な作業を割り振り、実務フローのなかで問題が起こりそうにないかを担当者自身に確認しています。
その結果、検査の現場では、目視判定が不要になったことが特に喜ばれました。コロニーの数が増えた場合の正確なカウントへのプレッシャーは経験者なら皆理解できるのではないでしょうか。その懸念がなくなったことで「とても負担が減った」と言われました。

図1 稟議に盛り込んだペトリフィルム™ プレートリーダーアドバンストのメリット

属人化を解消しデータ活用で傾向把握を実現

――PPRAの導入後、半年の微生物検査の研修期間が3か月ほどに短縮できたそうですね。

属人化を解消する点で思った以上の効果がありました。人手不足に対応するため、担当者を多能工化し柔軟にシフト編成を組む案は以前からありました。ただ、複数の技能を得ることは容易ではありません。導入後は、研修期間の短縮化で複数の人員が検査に関わるようになり、個人の手技に依存したマニュアルが作られる心配もなくなりました。現在は複数の人間でマニュアルを検証し、改善をする良い循環が生まれています。
また、微生物検査の結果を蓄積したデータは、製品ごとにソートをかけて時系列でデータを比較(図2参照)しています。日々の検査結果の値を履歴と照合し、結果の正当性を確認したり、傾向を把握したりできるようになりました。

図2 1か月の検査結果エクセルファイル

リスク管理体制強化に向けた更なるデジタル化・自動化

――残った紙の作業もすべてデータ化のご予定だそうですね。

作業時間短縮のため、検査計画のノートなどもすべてエクセル帳票化し一括運用したいです。判定はすべてを機械化できていないので、今後は判定から記録まで、加えて、グラフ化や管理図の作成なども、すべて自動化できればと考えています。
その結果、担当者は課題の抽出など、検査本来の目的である製造の安定化に資する作業に時間を割くようにしたいです。

――効率化により生まれた時間は、どういった業務に活かされていくご予定ですか。

今後は調達先をも巻き込んだ「攻め」のリスク管理体制を構築していきたいと考えています。食材の調達先には検査室を持っていない事業者も多くいます。工場に伺った際に、前年の検査結果の推移や改善の結果のフィードバックを行い、改善が見られた場合は、数値を示して感謝を伝えることも大切だと思っています。

――今後も検査数の増加が予測されると伺いましたが、どう対処されるのですか?

部署の人数を増やさずに検査日数を増やすことにチャレンジします。現時点でも、検査室が週5日稼働であるのに対し製造自体は毎日行っているため、曜日によって繁忙に偏りがあります。これから更に検体数が増え負担のばらつきが生まれることを見越して、工程の自動化と標準化を進めて週6日検査を実施できる体制を整えたいですね。
また、検査結果のデジタル化を通じて履歴の傾向把握と分析を実施し、異常発生前に重点箇所の入念な清掃を行うなど、検体数を減少・標準化させる本質的な品質管理業務につなげたいと考えています。これは私一人で取り組んでも意味がありません。部署全体で取り組んでいくつもりです。

図3 今後取り組みたいこと
  • 掲載の内容は、2022年2月時点のものです。
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