微生物検査は正確な結果が前提ですが、日々の業務の中で「ついうっかり」「時間がなくて」「いつもと少し異なる操作をしてしまった」といった経験はありませんか。
寒天培地を用いた従来法では、各工程において操作ミスが生じやすいポイントが多数存在します。ミスは個人の不注意だけで起きるわけではなく、手順の複雑さや工程数の多さが根本的な原因であることも少なくありません。
本稿では、現場で実際に起こりやすい7つの操作ミスとそのリスク・影響を、具体的な事例とともに解説します。
寒天培地の検査工程と主なリスクポイント
寒天培地を用いた微生物検査では、試料液の調製から判定まで多くの工程が必要です。各工程にリスクが潜んでいます。
寒天培地の培地調整および接種に必要なもの


第3位 <接種(混釈)> フラスコまたはねじ口瓶からのコンタミネーション
- 当社に寄せられたご質問や検査現場での事例をもとに選定・順位付け
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第1位
培地保温
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培地の保管温度が高すぎる |
同じ検液を異なる保管温度の培地で混釈培養した標準寒天培地の例

コロニー数:正常

コロニー数:減少

コロニー数:ほぼゼロ
![]() 起こりうる問題 |
適切な保管温度(45 ℃)では正しい結果が得られるが、複数のシャーレへ分注する際は寒天が固まりやすく、作業効率が低下しがちである。そのため、作業効率を優先して寒天培地を高めの温度で管理すると、熱で微生物が死滅・減少し、実際より低い菌数として検出されることがある。 |
![]() 実際の事例 |
作業効率性向上のために恒温水槽の温度を45℃から55℃に変更したところ、検出される菌数が極端に減少した。また、急な試験対応で、寒天培地の冷却が不十分なまま混釈してしまった事例もあった。 |
![]() 改善のポイント |
混釈用培地の保管温度は適切に管理します。培地調整後、十分な冷却時間を確保することが重要です。 |
![]() 解決!
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ペトリフィルム™ 培地は、保温操作が不要。 |
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第2位
培養(判定)
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培地表面が拡散集落で覆われる |
同じ検液を重層・乾燥の有無で測定した例(スナック菓子検体、標準寒天培地)

コロニー数:不明(数えられない)

コロニー数:明確(正しい結果)
![]() 起こりうる問題 |
遊走性の細菌や芽胞菌が含まれる検体で、重層・乾燥操作を省略すると、集落が培地表面に大きく広がりコロニーをカウントできなくなる。適切な対策がなければ結果を得られないリスクがある。 |
![]() 実際の事例 |
スナック菓子検体の検査で、拡散集落防止のための重層・乾燥操作を省略して培養した結果、コロニーが1個しか確認できなかった(正しい結果:15cfu)。 |
![]() 改善のポイント |
遊走性菌や芽胞菌が予想される検体では、固化後の重層・乾燥などを実施してください。対象検体の菌種特性を事前に把握し、手順書に明記することが重要です。 |
![]() 解決!
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ペトリフィルム™ 培地は、重層・乾燥などの操作が不要。 |
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第3位
接種(混釈)
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フラスコまたはねじ口瓶からのコンタミネーション |

【コンタミ原因①】
培地ビンに水槽のお湯が付着し、ビンを伝ってシャーレにコンタミ

【コンタミ原因②】
ビン口がシャーレに接触

【コンタミにより菌が多数検出された例】
丁寧な取り扱いをしないとコンタミの原因になります
![]() 起こりうる問題 |
恒温水槽のお湯(菌数が高い)がシャーレに混入、またはビン口が試料液で汚染され別のシャーレへ微量コンタミする。培養後に不自然かつ原因不明な汚染として検出される。 |
![]() 実際の事例 |
恒温水槽から培地ビンを取り出す際、水滴を十分に拭き取らなかったために、ビンを伝ってシャーレにお湯が混入してしまった。また培地ビンとシャーレのフチが触れてたため、試料液が培地ビンを介して別のシャーレにコンタミした。 |
![]() 改善のポイント |
恒温水槽から培地ビンを取り出す際は必ず水滴を拭き取り、分注時はビン口がシャーレに触れないよう注意してください。器具を適切に取り扱うことが重要です。 |
![]() 解決!
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ペトリフィルム™ 培地は、恒温水槽・培地ビンを使用しないため、 |
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第4位
培地調製
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粉末培地の秤量・計算ミス |
寒天培地の調製では計算・秤量など多くの手順が必要
![]() 起こりうる問題 |
培地性能が損なわれ、本来の菌数が正確に反映されない結果となる。気づかないまま報告されるリスクが非常に高く、後から追跡することも困難。 |
![]() 実際の事例 |
標準寒天培地300 mLを調製する際、1 Lあたりの分量から必要量を計算するつもりが計算ミスをし、誰も気づかなかった。 |
![]() 改善のポイント |
粉末培地の必要量の計算・秤量では、2名でのダブルチェックを実施し、計算式を手順書に明記してください。また、計算せずに調製できるように調製量を標準化することも有効です。 |
![]() 解決!
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ペトリフィルム™ 培地は、粉末培地の調製・秤量が不要。 |
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第5位
培地調製
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オートクレーブ滅菌時に培地が焦げる |


溶解・滅菌を正しく実施

溶解混合不十分で滅菌
![]() 起こりうる問題 |
粉末培地の塊が残っていたり精製水との混合が不十分だったりすると、滅菌時に焦げが発生。培地性能が損なわれ適切な結果が得られないことがある。 |
![]() 実際の事例 |
調製量が多く早く培地を作りたかったので粉末培地を加温溶解せずにオートクレーブ滅菌した。「オートクレーブすれば大丈夫」と考えていたが焦げが発生した。 |
![]() 改善のポイント |
粉末培地は十分に加温溶解してから滅菌してください。手順を省略しないことが重要です。 |
![]() 解決!
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第6位
接種(混釈)
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コロニーが均一に分散しない |


![]() 起こりうる問題 |
培地と試料液の混合が不十分だと、コロニーがシャーレの一部に集中し正確なカウントができない。実際より大幅に低い(または高い)菌数が報告されるリスクがある。 |
![]() 実際の事例 |
繁忙期で十分な混釈操作ができなかった。培養後、偏ったコロニー分布となり適切に計数できなかった(適切混釈:210 CFU → 混釈不良:23 CFU相当)。 |
![]() 改善のポイント |
混釈は丁寧にゆっくり大きく八の字を書くようにシャーレを動かします。混釈操作を省略しないことが重要です。 |
![]() 解決!
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ペトリフィルム™ 培地は、混釈操作不要。 |
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第7位
接種(塗抹)
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コロニーが均一に分散しない |


![]() 起こりうる問題 |
試料液が培地に十分染み込まない状態で培養すると、コロニーが密集して正しい判定ができなくなる。 |
![]() 実際の事例 |
黄色ブドウ球菌検査で、塗抹した試料液が培地に染み込む前に表面が濡れた状態で培養した結果、コロニーが培地上で不均一に発育。また急いで塗抹したため培地がえぐれ、試料液が集中してコロニーが密集して発育し、分離できなかった。(正常塗抹:12 CFU → 不良塗抹:4 CFUに見える) |
![]() 改善のポイント |
試料液が培地全体に均一に広がり、十分に吸収されたことを確認してから培養してください。また、塗抹操作は習熟度に左右されやすいため、定期的に手技を確認することが重要です。 |
![]() 解決!
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ペトリフィルム™ 培地は表面塗抹の操作が不要な為、検査員の技術に依存しない安定した結果が得られます。 |
なぜ操作ミスは繰り返されるのか
今回ご紹介した7つの操作ミスに共通するのは、「時間的プレッシャー」「個人の技量への依存」「ミスに気付きにくい」という現場特有の構造的課題です。これらは個人のモラルや注意力だけでは解決できません。

時間的プレッシャー
日々の検査業務では、検体数や納期などさまざまな要因で時間的プレッシャーが生じ、本来行うべき操作が省略されることがある

個人の技量への依存
操作の正確さが担当者の経験や習熟度に左右され、検査結果に差が生じることがある

ミスに気付きにくい
操作ミスがあっても、その場では気付けず、培養後も結果が「それらしく」見えるため、誤りと判断できないことがある。
工程比較:寒天培地 vs 簡易培地
ペトリフィルム™ 培地は寒天培地で必要な多くの工程を省略できます。これにより、ミスが発生するポイント自体を大幅に減らすことができます。
| ペトリフィルム™ 培地 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 器具機材 準備 | 培地調製 | 接種 | 培養 | 判定 | |
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| 寒天培地 | |||||
| 器具機材 準備 | 培地調製 | 接種 | 培養 | 判定 | |
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寒天培地 注意ポイント |
粉末培地の適切な管理 希釈水の事前評価 |
器具の定期的な校正 | 培地の分注量 | 器具の定期的な校正 | 残渣との見分け |
横にスクロールできます
工程別リスク比較:寒天培地 vs 簡易培地 (ペトリフィルム™ 培地)
| 工程・リスクポイント | 寒天培地(従来法) | ペトリフィルム™ 培地 |
|---|---|---|
| 培地調製(計算・秤量) | 必要(計算ミスリスクあり) | 不要 |
| オートクレーブ滅菌 | 必要(焦げリスク) | 不要 |
| 保温温度管理 | 必要 | 不要 |
| 培地ビン取り扱い | 必要(コンタミリスクあり) | 不要 |
| 混釈操作 | 必要(混釈不良リスクあり) | 必要(簡単なスプレッダー操作のみ) |
| 塗抹操作 | 必要(コンラージ操作は熟練を要する) | 不要 |
| 重層・乾燥操作 | 必要 | 不要 |
横にスクロールできます
まとめ:検査精度を維持するために今できること
7つの操作ミスを振り返ると、「工程が多い=ミスが起きやすい」という単純な構造が見えてきます。
操作者教育や手順の見直しは、検査精度を維持するために重要です。しかし、工程数が多い検査法では、ヒューマンエラーを完全になくすことは容易ではありません。そのため、工程そのものを簡素化できる検査法を選択することも、再現性の高い検査体制づくりにつながります。
- 手順書の整備 各工程の操作基準を明文化し、ダブルチェックを標準化する
- 定期的なトレーニング 特に塗抹・混釈など習熟度に依存する操作は定期確認を実施する
- 検査法自体の見直し 工程数や手間を減らせる培地・方法への切り替えを検討する
- (導入時は)現行法との同等性確認 新しい培地や方法へ切り替える際は、現在の方法との比較試験を実施する
工程の削減
秤量・滅菌・保温・混釈・塗抹など ミスが起きやすい工程を大幅削減
標準化
既製品ゆえに培地性能が常に一定 担当者が変わっても結果が安定
属人化の排除
特別な熟練技術がなくても 安定した検査結果を取得可能
【参考】ペトリフィルム™ 培地(簡易培地の選択肢として)
上記のリスク比較で示したとおり、フィルム型の簡易培地は培地調製・培地の保温・混釈および塗抹工程が不要なため、操作ミスのポイントを大幅に削減できます。ネオジェンジャパンでは現行培地との同等性を科学的に確認するサービス(相性評価試験)も提供しています。導入検討の際はご相談ください。
簡易培地への切り替えを検討している方へ
「今の検査結果が本当に正しいか確信が持てない」という方には、現行培地との同等性を科学的に検証する 相性評価試験サービス(Matrix Feasibility)のご利用をお勧めします。貴社検体に合わせた検証が可能です。
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