平成28 年10 月に病原菌自動検出システムが、検疫所のサルモネラ属菌とリステリア・モノサイトゲネスのモニタリング検査法に収載されました。検疫所のモニタリング検査は公定法で検査されていますので、病原菌自動検出システムの検査結果が、公定法と同等に扱われるということです。
また病原菌自動検出システムは、100 種類以上のサルモネラ菌株と100 種類以上の擬似のサルモネラの菌株で、包含性や排他性を確認されていす。食肉や食肉製品以外にも魚や水産製品、乳や乳製品、動物飼料に至るまで様々な試料で妥当性を確認されており、たいへん精度が高いということから導入を決めました。(※陰性の場合)
公定法によるサルモネラ属菌の検査は、検査開始から陰性の判定まで4日必要です。しかし、病原菌自動検出システムを使用することで、2日で判定できるようになりました。検査日数の短縮は一番大きなメリットです。
これまでの方法では複数の選択培地を調製して、準備などに要する時間や手間が多く必要でした。また、検査員に熟練の技能を求められましたが、少ない経験でも検査が可能になりました。
検査日数が半分になり経費も削減されたことで、食品の品質や安全性に関する研究に人員を配置することができました。会員の皆様に、役立つ情報を多く提供できる体制になり、喜んでいただけると思います。
今後は輸入食品のリステリア・モノサイトゲネスの検査も、病原菌自動検出システムを使用することを検討しております。アメリカ合衆国向け輸出食肉の、腸管出血性大腸菌のスクリーニング検査で指定されているどの機種も、簡単に操作できるものではありません。操作が簡単で精度が優れている病原菌自動検出システムが使用できるようになれば、検査事業により役立つと思います。
腸管出血性大腸菌についても、日本の公定法では6 血清の区別を行うため、簡単に検査ができるようになれば助かります。
一般社団法人 食肉科学技術研究所〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1 丁目5 番6 号(ハム・ソーセージ会館内)
食品の品質、安全に関わる検査、研究及び調査事業を実施。農林水産大臣の登録認証機関として、JAS 法に基づきハム、ソーセージ、ベーコンを製造する工場の認証を行う一方、食品事業者からの依頼により食品の品質、栄養、安全を確認する理化学検査や細菌学検査を広く提供するほか、厚生労働省登録検査機関として食肉、食肉製品、水産食品などの輸入時に必要な検査も行っている。そのほか、食品工場の品質管理、衛生管理状況の調査、点検、食品の品質や安全性に関する研究を行っている。
独自のテクノロジーを用いた遺伝子検査法によって、迅速に食中毒の原因となる病原菌を定性的に測定します。
シンプルな操作手順が誰でもできる検査体制を構築し翌日までに精度の高い結果を得ることで、食中毒を未然に防ぐリスクマネジメントの実現に貢献します。
病原菌がもつ固有の遺伝子(DNA)を測定機器が検出するため、培養法に比べて全体の検査工程が少なく、短時間で結果の判定が可能です。サルモネラ属菌の場合には、「培養法」で要する時間の約4 分の1、26時間で結果の判定が可能です。
キット化された試薬のため、マイクロピペットによる2 回の分注操作で検査ができ、人的ミスの軽減につながります。測定機器では、複数の対象遺伝子を同時に測定でき、ソフトウェアによる自動判定なので、検査結果が経験や個人差に左右されません。
病原菌自動検出システムのほとんどの試薬が妥当性確認された検査法として第三者認証機関に認証されており、日本国内においては「食品衛生検査指針微生物編改訂第2 版2018」に収載されています。
また、厚生労働省が国内の各検疫所に発出した「A.O.A.C.(OMA)の認証を受けた簡易測定装置による試験法」(H28.10.7)の事務連絡通知に、使用を許可された簡易測定装置として明記されています。
食品衛生検査指針収載
AOAC Intl. Official Method
AFNOR Validated Method