“四つ葉のマーク” でお馴染みのスーパーマーケット「ライフ」を首都圏、近畿圏で200 店舗以上展開する株式会社ライフコーポレーション様。国際的な食品安全マネジメントシステム「FSSC 22000」の認証を取得、日配品の商品数の増加、人手不足対策などを背景に、2016 年から段階的に
「ペトリフィルム™ 培地」を導入しています。
株式会社ライフコーポレーション
品質保証部 天保山品質保証課
課長
石井暁子氏
株式会社ライフコーポレーション
品質保証部 天保山品質保証課
担当課長代理
金岡慶典氏
天保山プロセスセンターでは多品目の商品を製
造しているため、以前から微生物検査の検体数
が多かったのですが、FSSC 22000 の認証取得をきっかけに、検体数がさらに増加。
また、FSSC 22000の運用施設では、妥当性確認された培地の使用、検査担当者の力量の証明なども要求されるため、簡便・迅速・高精度な検査法の採用が喫緊の重要課題として挙がっていました。
平成27年に黄色ブドウ球菌の試験法が改正され、ベアードパーカー培地が公定法として採用されたことをきっかけに、「ペトリフィルム™ 黄色ブドウ球菌測定用プレート(STXプレート)」を採用しました。その後、「ペトリフィルム™ 培地」の使いやすさや効率性が評価され、一般生菌、大腸菌群、E. coli(大腸菌)、カビ・酵母、乳酸菌用プレートへも採用を拡大しました。
約3年で検体数はおよそ1.5倍に増加。しかし、
培地調製の時間や労力の削減、培養時間の短縮
などが図られたことで、検体数の増加にも問題
なく対応できています。また、検査担当者は2
週間前後の教育・訓練で、検査の初心者であっ
ても、信頼度の高い検査を実施することができ
るようになりました。
本社所在地 | [ 大阪本社] 〒532-0004 大阪市淀川区西宮原2-2-22
[ 東京本社] 〒110-0016 東京都台東区台東1-2-16 |
設立 | 創業:明治43 年、設立:昭和31 年 |
資本金 | 100 億400 万円 |
営業収益(連結) | 6,986 億93 百万円(2019年2 月期) |
従業員数(連結) | 27,297(2019年2 月期) |
事業内容 | スーパーマーケットチェーン |
URL | http://www.lifecorp.jp/ |
首都圏、近畿圏で200店舗以上のスーパーマーケット「ライフ」を展開する株式会社ライフコーポレーション様は、同地域で5ヶ所のプロセスセンターを運営しており、各センターでは原材料入荷から製品出荷に至るまで、徹底した品質管理や衛生管理に取り組んでいます。食の安全・安心にもこだわっており、埼玉・栗橋、同・加須、大阪・南港のプロセスセンターではISO 22000、千葉・船橋、大阪・天保山のプロセスセンターではFSSC 22000を運用しています。
同社グループの品質保証体制の特徴として、センターごとに品質保証部門を設置している点、その管理体制や具体的な検査法などは各センターの裁量で決定できる点などが挙げられます。天保山プロセスセンターでは、少量多品目のアイテムを中心に取り扱っていることから、以前から原材料、最終製品、中間製品などの微生物検査の検体数が多く、検査業務の効率化(簡便かつ信頼性が担保された検査法の採用など)が課題となっていました。
また、主力商品が日配品であることから、従来の微生物検査では、検査結果がわかるまでに数日を要し、結果が得られた時には、商品はすでに消費者の手元にわたっていることが多いことから、培養時間の短縮も重要な課題の一つでした。
さらに、FSSC 22000の運用をきっかけに、環境検査(施設・設備、従事者などの衛生検査)が大幅に増加しました。また、HACCPに取り組むと、原材料や製品の検査だけでなく、工程管理の適切性を検証するための検査が不可欠です。これらの検査を、食品衛生法で定められた公定法で行うのは、検査に多大な時間や労力を要します。そもそも工程管理の検証検査は、必ずしも公定法で行うことは要求されておらず、各施設が“自主検査” として検査法を選択することができるものです。ただし、そこで使用する培地は「国際的な第三者機関による妥当性確認を受けていること」「できるだけ簡便・迅速に結果が得られること」などが望まれます。
また、株式会社ライフコーポレーション様では2018 ~ 2021年度の第六次中期計画において「スピーディに変化する環境下において、従来の延長線上の取り組みでは競争を勝ち抜くことはできない」という考えの下、同社が目指すべき姿を明文化した「ライフらしさ宣言」を策定しました。
その宣言では「お客様からも社会からも従業員からも信頼される日本一のスーパーマーケット」になるために、お客様に「おいしい」「ワクワク」「ハッピー」を感じていただけるよう各種の取り組みを行っていくことが表現されています。その方針を実現する一環として、積極的な新商品開発にも取り組んでいますが、新商品開発では試作や製造工程の検証など多数の検査が必要です。また、新商品の中には、開発前からすでに発売日が決まっていて、そのスケジュールに合わせた検査対応に苦慮することもありました。簡便・迅速に高精度の検査が実施できる体制の整備は喫緊の課題として挙がっていました。
FSSC 22000規格では、検査室の質管理も求められます。具体的な要求事項として、例えば「第三者機関による妥当性確認を受けた培地で行うこと」「検査担当者の力量評価を行うこと」などが挙げられます。限られた人員で検体数の増加に対応し、かつ検査精度も維持することは、今後の重要な課題として挙がっていました。さらに、今後は「人手不足に伴い、検査担当者の確保が難しくなる」「検査担当者の教育・訓練に十分な時間を割くのが難しくなる」などの状況も予測されます。
そうした複合的な背景から、これまで以上に“簡便” “迅速” “高精度(高信頼)” の検査の必要性が高まっていました。天保山プロセスセンター・品質保証課では、そうした課題の解決に向けた方策の一つとして「ペトリフィルム™ 培地」に着目しました。
「ペトリフィルム™ 培地」を採用した直接的なきっかけの一つは、黄色ブドウ球菌の試験法の改正(平成27年7月29日付け厚生労働省通知)でした。以前は黄色ブドウ球菌の公定法は卵黄加マンニット食塩寒天培地のみでしたが、改正によりベアードパーカー寒天培地も使用可能となりました。卵黄加マンニット食塩寒天培地は調製が煩雑で、とりわけ取り扱う検体数が多い現場では大変な手間となることから、ベアードパーカー寒天培地への変更を検討しました。
「ベアードパーカーへの切り替えを考えるにあたり、培地調製の手間などを考慮に入れると、フィルム培地の方が全体最適化が図れると考え、『ペトリフィルム™ 黄色ブドウ球菌測定用プレート(STXプレート)』の採用を検討しました。培地の選定に際して最も重視したのが、AOACやAFNORなどの国際的な第三者機関による妥当性確認を受けていることでした。幣社のブランドを守るためには、取引先や消費者の信頼を強固に維持しなければなりません。培地性能の信頼性は重要なポイントでした」
(品質保証部 石井暁子氏)
「ペトリフィルム™ 黄色ブドウ球菌測定用プレート(STXプレート)」の採用により、「ペトリフィルム™ 培地」の簡便性、迅速性、信頼性を実感できました。その経験を基に、「ペトリフィルム™ 生菌数迅速測定用プレート(RACプレート)」、「ペトリフィルム™ 大腸菌群数測定用プレート(CCプレート)」、「ペトリフィルム™ E. coli および大腸菌群数迅速測定用プレート(RECプレート)」、「ペトリフィルム™ カビ・酵母迅速測定用プレート(RYMプレート)」、「ペトリフィルム™ 乳酸菌数測定用プレート(LABプレート)」の採用も決定しました。
「『ペトリフィルム™ 培地』が使いやすい特徴として、判定のしやすさが挙げられます。寒天培地の場合、食材との判別が難しい場合があります。しかし、『ペトリフィルム™ 培地』の場合、コロニーに色が付くため、食材との見分けがしやすいです。例えば、STXプレートであれば、コロニーが赤紫色に染色されます。RECプレートであれば、E.coli は全ての青色のコロニーに、それ以外の大腸菌群は気泡を伴う赤色のコロニーとして現われるため、誤判定のリスクは格段に低減できます」
(品質保証部 石井暁子氏)
「最近は、お客様からカビや酵母などの影響が考えられる品質関係(商品の変敗、劣化など)の問い合わせがあった際には、RYMプレートも使用しています。天保山プロセスセンターでは消費期限の短い惣菜などがメイン商品なので、カビ・酵母の検査は頻繁に行うわけではありません。頻度の低い検査なので、(普段から)培地や資材を用意しておいたり、検査担当者の訓練を行うのは、必ずしも効率的とはいえません。しかしながら、最近は、おせち料理用の惣菜など、比較的消費期限の長い食品も製造しているので、カビ・酵母の検査に備えておく必要はあります。いざお問い合わせがあったときに、少しでも短時間で対応できるよう、RYMプレートを活用しています」
(品質保証部 金岡慶典氏)
FSSC 22000では検査室の質管理、検査員の力量評価は必須の管理項目です。天保山プロセスセンターの検査業務は、パートタイマーが中心に行っています。「パートタイマーでもベテランでも、検査結果は信頼できる」という説明責任が果たせなければなりません。その点、「ペトリフィルム™ 培地」は操作手順が簡便なので、短期間で検査に必要な技術を習得できます。
「幣社の経験でいえば、2週間ほどの教育期間があれば、微生物検査の初心者であっても、ベテラン検査員と同程度の精度の検査ができるようになります。その上で、内部精度管理や外部精度管理なども行うことで、検査担当者のスキルを確保しています」
(品質保証部 金岡慶典氏)
天保山プロセスセンターは、主に消費期限の短い惣菜などの日配品を製造していること、多品目のアイテムを取り扱っていること、FSSC 22000認証を取得していることなどを背景に、従来からの原材料や中間製品、最終製品の検査に加えて、工程管理が適切に行われていることを検証するための検査、従事者や施設・設備など環境の衛生状態の検査も大幅に増えてきました。検体数は、3年前に比べ約1.5倍に増えており、今後も増加する可能性が高い状況です。
「以前は寒天培地を用いた混釈培養を行っていましたが、シャーレを用いた培養検査では、培地調製の時間や労力がかかります。また、培養時のスペースも必要です。「ペトリフィルム™ 培地」は培地調製の時間などが不要になるので、作業時間は大幅に削減され、昨今の総労働時間の削減などを含む「働き方改革」の観点でも効果がありました。培養スペースや廃棄物量も大幅に減り、廃棄に要するコストやエネルギーの削減、環境負荷の低減などの効果も顕著です。先ほど述べたように、判定もしやすいので、誤判定のリスクの低減、判定に要する時間の短縮などにもつながっています」
(品質保証部 石井暁子氏)
近年、微生物検査では「目的適合性」がキーワードになっています。例えば、公定法は行政検査などで採用するものであり、自主検査は必ずしも公定法で行う必要性はありません。「目的」の設定が非常に重要です。
「天保山プロセスセンターで行っているのは、あくまでも“自主検査”です。主な目的は『工程管理に問題の兆候がないか?』ということの判断ですから、簡便・迅速な検査法(第三者機関による妥当性確認を受けた培地)で十分に目的は果たせます。日常的な検査を『ペトリフィルム™ 培地』で行い、時々は『きちんとした検査ができているか?』を精度管理で確認すればよい、と考えています。検査業務で重要なのは、製造現場に対する検査結果のフィードバックです。『検査結果をいかに生かすか?』を考え、現場の衛生管理や品質管理、HACCP運用の改善につなげることが大事であると考えています」
(品質保証部 金岡慶典氏)
天保山プロセスセンターでは「検査結果を改善につなげる」という点を特に重視しています。そのため、「ペトリフィルム™ 培地」で得られた検査結果を、「よりお客様に満足していただける商品の開発」「より衛生的な製造環境の整備」などにつなげられるよう、検査体制の一層の充実を目指して、日々、模索しています。その一例として、一般生菌の検査については「ペトリフィルム™ 生菌数迅速測定用プレート(RACプレート)」と従来の混釈法を併用しています。
「菌数を簡便・迅速に把握したり、菌数の推移の傾向を把握する上で『ペトリフィルム™ 培地』は非常に優れています。しかし、『菌叢を把握する』という点では、混釈法の方が多くのデータが得られる場合もあります(私は『微生物の顔が見える』と表現しています)。もし何か問題が起きたり、問題の兆候を察知した時に、普段から(微生物の数だけでなく)菌叢も把握できていれば、もしかしたら原因究明や現場対応の際に役立つかもしれません。普段から多角的なデータを収集しておくことが、万一の時への備えになると考えています」
(品質保証部 石井暁子氏)
ペトリフィルム™ 培地は、「一般的なフィルム培地よりも大きめでカウントしやすい」「大腸菌」や大腸菌群などの酵素基質培地は、色での判別がしやすく、誤判定のリスクが減る」と検査担当の皆様からも好評。また、わかりやすく、読みやすい「マニュアル」 を作成し、掲示されています。
ペトリフィルム™ 培地は、一般的なシャーレと比べて培養に必要なスペースを大幅に削減できます。多数の検体を取り扱う天保山プロセスセンターでは、保管スペースや廃棄物量の削減、環境負荷の低減など、多くの面で効果を実感していただいております。