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  5. ユーザーインタビュー⑤

USER INTERVIEW 株式会社ヤオコー様

我々の業務にお客様のメリットがあるのか?を常に考え、検査部門の業務を改善。

美味しく、安全な商品を供給することをテーマに、徹底的に“ムダを排除”。

ペトリフィルム™ 培地の簡便性・迅速性・信頼性が検査業務の効率化・標準化に貢献。

株株式会社ヤオコー
デリカ事業部 デリカ・生鮮センター
品質管理担当マネージャー 兼
生産管理担当マネージャー
伊藤哲也氏

株式会社ヤオコー様では、埼玉県を中心に1都6県で、スーパーマーケット「ヤオコー」161店舗、「エイビイ」11店舗を展開しています(店舗数は2019年3月末現在)。味や鮮度、品揃え、価格など“価値ある商品”の開発やサービスの向上に努めており、30期連続の増収・増益を達成(2019年3月期決算)。一般消費者はもちろん、業界内や取引先からも高い評価を得ています。

「美味しい商品」「安全な商品」を支えるのは、微生物検査などの科学的根拠に基づく信頼性です。その信頼性を実現する一環として、株式会社ヤオコー様では2017年から「ペトリフィルム™培地」を導入されています。

株式会社ヤオコー様では「味・鮮度・品質」を合言葉に、「お客様の来店時間に応じて製造する」というスタイルにこだわっています。午前中は昼食用の商品を、夕方は夕食用の商品を製造し、オリジナル商品を「できたて、揚げ立て、作りたて」で提供されています。

株式会社ヤオコー様の会社概要

本社所在地 〒350-1124 埼玉県川越市新宿町1-10-1
設立 1957年(昭和32年)
資本金 41億9900万円
営業収益(連結) 4149億9200万円(平成30年3月期実績)
従業員数(連結) 1万4691人(平成30年9月末)
事業内容 スーパーマーケットチェーン
URL https://www.yaoko-net.com/

導入の背景

検査業務の効率向上を目指し、検査部門を抜本的に見直し

人員数を変えずに品質保証(QA)
部門・ISO 部門を設立

株式会社ヤオコー様のデリカ・生鮮センター内に設置されている検査室では、2017年から検査業務の抜本的な見直しに着手しました。特に注力したのは“検査業務の効率化”で、「より多くの検体を迅速かつ精度を維持して検査できるようにする」「検査業務の効率化だけでなく、品質管理・品質保証の機能も強化する」ということを見据えました。具体的な目標として、以前、検査(微生物検査、理化学検査)は、7人で運営をしていましたが、検査担当者を4人に減らし、かつ品質保証(QA)、ISO担当も新たに立ち上げることにしました。株式会社ヤオコー様ではISO 22000を運用していますが、新体制では、従来の品質管理(QC)担当はISO 22000におけるハザード分析や管理手段の構築など、品質保証(QA)担当はHACCPや商品の安全性に関する妥当性確認など、ISO担当は工場環境の改善などを担当しています。

「組織再編に際して、『単なる人員削減にしない』という点には配慮しました。組織再編の目的は『より美味しい商品づくり』です。そのためには、スタッフ一人ひとりが高いモチベーションを持っていることがきわめて重要です。検査担当から品質保証(QA)やISOの業務に異動になった後も、“やり甲斐”や“働き甲斐”を持って、より一層の活躍をしてもらう環境を整えることは重要な課題でした」
(デリカ事業部 伊藤氏)

組織変更の効果の一例

組織変更、業務改善の取り組みの成果の一例として、2018年には工場内での帽子と手袋の着用をやめたり、過剰なビニールの使用の廃止、廃棄物の削減、使用薬剤の削減などを実現しました(詳細は後述)。また、お客様からのお申し出は、工場設立当初の3.2ppm※から、2018年は累計0.9ppmまで低減しました。

これらの効果が得られた背景には、品質保証(QA)部門による“妥当性確認”によって、科学的根拠に基づく現場改善が可能になった点が挙げられます。様々な妥当性確認を行うには、微生物検査の迅速化・効率化が不可欠でした。検査業務に潜在していたムダを徹底的に排除し、作業手順を標準化することで、より効率的な検査が実施できるようになりました。その「効率的な検査」を実現するに当たり、株式会社ヤオコー様は「ペトリフィルム™培地」に着目しました。

※ppm:お申し出件数÷出荷数× 100万

選定の理由

ムダの排除、作業の標準化により検査時間を短縮

検査関連業務の棚卸しを実施

作業効率の改善では、具体的な数値目標として「検査(微生物・理化学)を1日24 MH※で運営できる仕組みにする」と設定しました。以前の7人体制のときは1日35 MHでしたが、4人体制で24 MHにするわけですから、ギャップとして11 MHを埋める必要があります。ヤオコー様では、この11 MHのうち、微生物検査が9 MHを占めていると考え、この9 MHを埋めるための改善に取り組みました。

まずは、検査室の業務において、微生物検査と理化学検査で、どの工程にどれくらいの時間をかけているか、すべての作業の棚卸し(現状把握)を行いました(図1参照)。微生物検査では、検査業務のほかにも、検体の回収、オートクレーブ、廃棄処理、清掃など、様々な作業で時間を費やしています。

そこで、効率化のための“作戦”のポイントとして、①検査時間の短縮(目標:3.5 MHの短縮)、②ムダな時間の徹底的な削減(目標:5.5 MHの削減)の2項目を設定しました。

※MH:man hours、延べ作業時間

課題①検査時間の短縮⇒簡便・迅速培地を採用した効果

一般的に微生物検査では培地調製、混釈、培養、菌数測定、結果判定(コロニーの識別)などの作業時間が必要です。また、検査担当者の技術の習熟度によっては、結果にバラツキが生じる可能性もあります。

「こうした課題を解決するために、『ペトリフィルム™培地』に着目しました。本培地を採用することで、培地調製の時間はゼロになり、結果判定までの時間を短縮することができます。培地の性能については、国際的な第三者機関(AOACやAFNORなど)により妥当性確認がされているため信頼性もあります。また、同培地はコロニーのカウントや識別がしやすいので、これらの作業に費やす時間が短縮されるとともに、担当者によるカウントや判定にバラつきが生じるリスクを低減できます」(デリカ事業部 伊藤氏)

ペトリフィルム™培地の時間短縮効果は約2時間の培地の準備時間が無くなることだけではなく、プレートへの記入、備品関連の移動作業などの事前準備の時間が短縮できたところにもあります。例えば、シャーレへの日付・番号記入とプレートへの記載を比較した場合、一日当たり約47分の時間削減効果がありました。備品関連の移動作業も1日当たり約30分の削減ができました。このような全体の時間短縮で、ペトリフィルム™培地導入のコスト削減効果も確認できました。

課題②ムダな時間の徹底的な削減

3 定を徹底、作業標準を確立

以前から「非合理的な動線、不要な往復作業などがないか?」と考えていました。そこで、徹底的な「作業の標準化」に取り組みました。「なぜこのやり方なのか?」を繰り返し自問することで、ムダが生じる原因を追及し、改善に努めました。

「作業の効率化、作業標準の確立において、まずは3定(定位置、定品、定量)の徹底を図りました。例えば、『微生物検査を行う際に、作業スペースのどこに何を置けば、最もムダなく業務できるか?』を徹底的に検討しました(図2参照)。これは一般的な教科書やマニュアルには書かれていない“検査のコツ”です。検査に熟練した人の作業を観察してみると、備品は常に同じ配置になっていますし、動きにムダがありません。作業手順を標準化できれば、自ずと作業時間も決まります。現在は、固定作業、変動作業に分けて、作業割当表で管理しています。現時点では2 MH程度の短縮となっています」(デリカ事業部 伊藤氏)

商品特性を考慮した検査の見直しも行いました。例えば、製品検査は、意図した一般生菌数以下になっているかを確認します。例として、ある商品の10倍希釈の検体では、多数のコロニーが出現し、1枚カウントするのに1分40秒かかりました。そこで、最適な希釈倍率を把握して、1枚当たり30~150のコロニーが出現するように、希釈を調整し、1枚のカウント時間を30秒に短縮しました(図3参照)。その結果、全体の作業時間について6 MHの短縮が実現できました。これは当初の目標を大きく上回る成果でした。

 

ただし、万事が滞りなく改革できたわけではありません。当初は失敗もありました。例えば、最初のうちは、ペトリフィルム™生菌数測定用プレート(ACプレート)は、検液がフィルムの脇からはみ出ることがありました(図4参照)。また、ペトリフィルム™乳酸菌数測定用プレート(LABプレート)は接種する検液量は適正であっても、スプレッダーで押さえる時間が遅いと、検液が均等に広がらない場合がありました。失敗があれば、その分だけ時間や培地がムダになります。作業標準として「菌液は培地の中央に接種する」「接種してから×秒以内にスプレッダーを使う」などのルールを確立することで、ムダの排除に努めました。

図2. 検査に係る作業について標準化と3 定(定位置・定品・定量管理)の徹底を図り、作業上のムダを排除

図3. 商品特性に合った作業標準を模索(希釈倍率の調整の例)

図4. ペトリフィルム™ 生菌数測定用プレートの失敗例

効果・メリット

妥当性確認の結果をISO 22000の継続的改善に生かす

CCP(Critical Control Point)やOPRP(Operation Prerequisite Program)に関する検証

「従事者の移動や応援によって及ぼす影響はないか?」「繁忙期で製造量が増えた場合、製品の菌数への影響はないか?」「原材料の変更、製造設備の変更など、製造環境の変化によって菌数が変動する可能性はないか?」など、様々な状況を想定した確認でも活用されています。

検証結果は、現場作業の改善にも生かされています。「なぜ、その作業が必要か?」という観点で確認を行うことで、現場からのムダの排除につなげています。

「一例としては、2018年には工場内での不要な場所での帽子と手袋の着用をやめ、過剰なビニールの使用の廃止、廃棄物の削減、使用薬剤の削減などに貢献しました。工場を視察した関係者からは『(帽子と手袋を着用しなくて)本当に大丈夫か?』と尋ねられることもありますが、『なぜ帽子と手袋をやめたのか』を納得してもらえるだけの、根拠を整備しています。手袋は着用していれば安心と思い、手洗いが疎かになることがあります。手洗いを徹底することで、ビニール製品(手袋など)の使用量、廃棄物量などの大幅な削減につながりました。同様に、食材の殺菌・除菌、環境の衛生管理に必要な薬剤の使用量も見直しました。その結果、薬剤の使用量の削減にもつながっています」
(デリカ事業部 伊藤氏)

改善効果を高める3つのポイント

株式会社ヤオコー様の検査室の“業務改善”の取り組みが効果を上げた背景として、3つのポイントがあります。

1. 「チャレンジ精神旺盛な小集団活動」
2. 「情報共有が円滑で、風通しが良い、“働き甲斐”を感じられる雰囲気づくり」
3. 「5Sの徹底によるムリ・ムラ・ムダがない作業環境の維持」です。

「最近は新規商品も増え、それに伴い検体数も増えています。検査は時間もコストもかかりますが、ムダを排除することで、『お客様に喜んでもらえる商品づくり』に一層の時間や労力を割くことができるようになります。今後も、常に新しいチャレンジをし、他社では扱えないような、斬新なコンセプトの商品や、競争力のある価格政策に貢献したいと考えています。業務改善に取り組んだ最大の成果の一つは『スタッフのスキル向上』という効果がみられた点ではないでしょうか。高いスキルを持ったスタッフが『美味しい商品で、お客様の食生活、お客様の満足度を高めたい』という一心で日々の業務に向かい合っています。このことが、当社の企業ブランドの一層の強化につながっています」
(デリカ事業部 伊藤氏)

「製品検査だけでなく、原材料、製造工程、仕掛品の検査など幅広く検査を行うことにより、これまで以上に科学的根拠に基づいて製品の安全性を説明できるようになった」というスタッフの皆様からのコメント。

「ペトリフィルム™培地」は培養や保管のスペースの削減、廃棄物の削減などにも貢献している。なお、現時点ではペトリフィルム™生菌数測定用プレート(ACプレート)、E. coliおよび大腸菌群数測定用プレート(ECプレート)、乳酸菌数測定用プレート(LABプレート)を採用している。