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日本と主要輸出地域におけるアレルゲン検査項目の違い

はじめに

食品の輸出においては、日本国内の表示制度だけではなく、輸出先国・地域の食物アレルゲン規制に適合した管理が求められる。EUや米国では、日本とは異なる食物アレルゲンの分類や表示対象が定められており、国内基準のみを前提とした検査設計では対応できない場合も少なくない。本稿では、日本、EU、米国および国際規格Codexの食物アレルゲン規制の違いを整理し、輸出食品において必要となる検査設計の考え方や検査用製品の選定について解説する。

1. 日本のアレルゲン規制の成り立ち

日本における食物アレルギー表示制度は、健康危害を防止する観点から全国の症例数や重篤度を踏まえて制度化され、2001年に表示制度が施行された[1]。この食品衛生法に基づく加工食品のアレルゲン表示制度の導入に伴い、症例数や重篤性に基づいて「特定原材料(表示義務)」と「特定原材料に準ずるもの(推奨)」が設定され、特定原材料を原材料とする加工食品および特定原材料に由来する添加物を含む食品には、アレルゲン表示が義務付けられた[2]。導入当初は特定原材料5品目、特定原材料に準ずるもの19品目が関連通知で規定されていたが、現在(2026年1月13日時点)の規定品目は以下の通りとなる[3]。

  • 義務表示(8品目)
    えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)
  • 推奨表示(20品目)
    アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・マカダミアナッツ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン
  • 2025年度中にカシューナッツは義務表示、ピスタチオが推奨表示の対象に追加される予定[4]

日本では国内の発症状況と重症度のデータが制度形成に強く反映されており、国内の食物アレルギー患者の食の選択肢を可能な限り担保することで、QOLの向上に大きく寄与していると考えられる。一方で、この制度形成の背景を理由に、他国と比較し制度および対象品目が必ずしも一致しない場合がいくつか挙げられる。ただし、Codex Alimentarius(Codex)は一般食品表示規格 CXS 1-1985において、国際的な最低限の必須アレルゲン表示品目を定める一方で、それ以外の表示対象の追加や一部の免除、表示方法の詳細については、各国・地域のリスク評価およびリスク管理判断に委ねている[5]。

制度での不一致の例としては、非原材料由来のアレルゲンに起因するコンタミネーションが考えられる場合の予防的アレルゲン表示(Precautionary Allergen Labelling: PAL)が挙げられる。日本では特定原材料等に関して「入っているかもしれない」等の可能性表示、つまりPALは認められておらず、原材料として扱われないものによるコンタミネーションが考えられる場合は注意喚起表示が望ましいとされている(例:本製品は○○を含む製品と共通の設備で製造しています)[6]。

一方で、例えばオーストラリア・ニュージーランドの食品業界の食物アレルゲンのリスク管理を代表する業界団体(The Allergen Bureau of Australia and New Zealand)は、食物アレルゲンリスク評価VITAL(Voluntary Incidental Trace Allergen Labelling)プログラムを通じ、表示を行う際の判断基準となる含有アレルゲン量の閾値を設定した上で、推奨表示としてのPALを行う際のガイドラインを公開している[7]。

加えて、日本では2001年の表示制度発足時から、表示を必要とする特定原材料等の総タンパク質量が、最終製品における個々の特定原材料等の総タンパク質量として数μg/g含有レベル又は数μg/mL濃度レベルと定義されており、この閾値に満たない場合はアレルギー症状を誘発する可能性が極めて低いため、表示が免除されている[8]。VITALプログラムなどでも、PAL運用を前提とした閾値設定への取り組みが進んでいるが、Codexでの統一基準の設定が現在進行系で行われており各国のPAL運用の統一がなされていないため、各国での閾値設定は途上段階である[9]。

2. 海外で主流のアレルゲン規制の成り立ち

2.1. Codex Alimentarius

Codexは国際貿易における食品表示の基盤として、世界的に重篤例が多いアレルゲンを中心にリスト化した。一般食品表示規格CXS 1-1985の4.2条において、アレルゲン表示の基本方針が規定されている[5]。
Codexは「国際最低基準」であり、各国固有の食物アレルギー事情は反映しないため、日本特有のそば、ヨーロッパのセロリ・マスタードなどは対象外となる。

Codexに関連する議論として、PALに関する科学的根拠の整理が進められている。具体的には、Codexの要請を受けてFAO/WHO合同専門家会合が開催され、世界規模での食物アレルギーの発症状況や重症度のデータを基に、各食物アレルゲンについて1食あたりの参照用量(reference dose)の設定に関するリスク評価が行われている[10]。ただし、各国での法的な規制はまだ広まっておらず、民間団体レベルでの適用が広まりつつあるのが現状である。

2.2. EU

EUでは、2003年の欧州議会及び理事会指令2003/89/ECにより、食品表示におけるアレルゲンの義務表示の枠組みが初めて導入された。その後、これらの規定は、食品表示制度を統合・近代化した欧州議会及び理事会規則(EU) No 1169/2011(いわゆるFIC規則)に引き継がれ、加盟国ごとの国内法化を要する指令から、EU全域で直接適用される規則へと整理されることで、統一的な制度として確立された[11, 12]。
表示義務の対象となるアレルゲンは、欧州議会及び理事会規則(EU) No 1169/2011のAnnex IIに14品目として明記されており、穀類、甲殻類、卵、乳、ナッツ類(具体名指定あり)といった典型的な食物アレルゲンに加え、セロリやマスタードといった特異的な項目や、亜硫酸塩(SO₂換算10 mg/kg以上)のような化学物質も含まれている点が特徴である[12]。

2.3. 米国

米国では、2004年に制定されたFood Allergen Labeling and Consumer Protection Act(FALCPA)により、主要な食物アレルゲンとしていわゆる「Big 8」(Milk, Egg, Fish, Crustacean shellfish, Tree nuts, Peanuts, Wheat, Soybeans)の表示が義務化された[13]。この制度は、食品表示の簡素化と消費者の迅速なリスク回避を目的とし、特に重篤な健康被害を引き起こす可能性の高いアレルゲンを明確に特定するという思想に基づいて設計されている。

その後、米国におけるごま(Sesame)アレルギーの有病率増加やリコール事例の蓄積を背景として、2021年にFood Allergy Safety, Treatment, Education, and Research Act(FASTER Act)が成立し、ごまが新たに主要アレルゲンとして追加された[14]。これにより、米国の義務表示対象は「Big 9」となった。
米国のアレルゲン分類思想の特徴は、「重篤なアナフィラキシーを引き起こし得る主要アレルゲンを包括的に管理する」点にあり、特にTree nuts(木の実類)を一つの包括的カテゴリとして扱う点が、日本やEUのように個別ナッツ種ごとに表示を求める制度とは大きく異なる。

3. なぜ輸出時には「輸出国の制度に合わせたアレルゲン検査」が必要なのか

輸出食品におけるアレルゲン管理では、国内制度への適合だけでなく、輸出先国・地域の表示制度およびリスク管理思想に適合しているかが重要となる。これは、各国でアレルゲンの定義、義務表示の対象、ならびに検査・表示に対する考え方が大きく異なるためである。
例えば、日本では表示対象外である亜硫酸塩、マスタード、ルパン豆はEUでは義務表示対象とされており、日本で推奨表示に位置付けられているごまも、米国ではFASTER Actの施行により主要アレルゲン(Big 9)として義務表示が求められている。また、PALの扱いも国によって異なり、日本では可能性表示が認められていない一方、EUや米国、豪州・ニュージーランドでは一定のリスク評価や閾値設定を前提として運用されている。
さらに、ナッツ類(Tree nuts、木の実類)のように、アレルゲンの分類思想自体が国ごとに異なる点も実務上重要である。日本では原則として個別品目ごとの管理が行われるのに対し、米国ではTree nutsとして包括的に扱われ、EUでは種類を特定した形で規定されている。これらの違いは、検査対象とすべきアレルゲンの選定や検査方法の設計に直接影響する。
このように、義務表示対象、PALの可否、表示免除や判断基準となる閾値、さらには分類思想が国ごとに異なる以上、輸出時には輸出先国・地域の制度に即したアレルゲン検査および検証が不可欠である。輸出先の規制要件を満たさない場合、表示違反による製品回収や輸入停止に直結するリスクが高く、事前の制度理解と適切な検査設計が回収リスク低減の観点からも重要となる。

4. 国外規制に合致したアレルゲン検査製品の選択

ネオジェンジャパンが提供する食物アレルゲン検査製品は、輸出先国・地域の多様な規制要件やリスク管理思想に対応できるよう、複数の検査アプローチを組み合わせて構成されている。製造工程の管理から原材料および最終製品の確認まで、検査目的に応じた選択が可能であり、国外規制への適合を見据えた検査体系の構築を支援する。

4.1. ネオジェンジャパンの食物アレルゲン検査ソリューションの全体像

ネオジェンジャパンが提供するアレルゲン検査製品は、輸出対応を見据えた検査設計に適した複数の選択肢を有している。大きくは、現場での迅速なリスク把握を目的としたイムノクロマト法検査キットと、原材料や最終製品の定量評価を目的としたELISA法検査キットを中心に構成されており、検査の目的や工程に応じた使い分けが可能である。
リビール™ イムノクロマトキットシリーズおよびProtein Rapid™ イムノクロマトキットシリーズは、製造環境や洗浄工程後の確認など、工程管理におけるスクリーニング用途に適したイムノクロマト法に基づく迅速定性検査として位置付けられる。環境ふき取りやCIPリンス水を用いた検証により、交差接触リスクの有無を短時間で把握できるため、PAL運用が前提となる国・地域向けの管理や、輸出先で義務表示対象となるアレルゲンの混入防止管理に有効である。
一方、ベラトックス™ ELISAキットシリーズはELISA法による定量検査であり、原材料受入時の確認や最終製品の出荷判定など、より厳密な検証が求められる場面に適している。輸出先で義務表示対象となる主要アレルゲンについて、定量的な結果をもとに社内基準や顧客要求への説明責任を果たすためのツールとして位置付けられる。

4.2. 国外規制別にみたアレルゲン検査製品の選択:EUおよび米国の代表例

EUおよび米国向け輸出製品では、日本の表示制度とは異なるアレルゲンの定義や分類思想を前提とした検査設計が求められる。EUでは欧州議会及び理事会規則(EU) No 1169/2011のAnnex IIに基づき、マスタードやセロリ、亜硫酸塩など、日本では表示対象外または重視されにくい項目が義務表示に含まれているため、国内基準のみを前提としたアレルゲン管理では不十分となる。
マスタードのような食物アレルゲンについては、リビール™ イムノクロマトキットシリーズやProtein Rapid™ イムノクロマトキットシリーズを用いた製造環境ふき取りや洗浄後確認により、工程内での交差接触リスクを効率的に把握することが可能である。

一方、亜硫酸塩は免疫学的アレルゲン検査法(ELISA法等)の対象外であるため、アレルゲン検査とは別系統の成分分析を組み合わせる必要がある。この点においては、ネオジェンジャパンが提供するMegazyme® 総亜硫酸塩測定用の酵素法分析キットを併用することで、EUで義務表示対象とされる亜硫酸塩についても定量的な検証が可能となり、EU向け輸出製品に求められる検査要件を包括的に満たすことができる。

一方、米国ではFALCPAおよびFASTER Actに基づき、ナッツ類が主要アレルゲン(Big 9)として包括的に管理されるが、表示実務上はアーモンド、クルミ、ピーカンナッツなど該当するナッツ種の特定が求められる。このため、米国向け輸出ではナッツ類全体を包括的に管理するスクリーニングと、特定ナッツ種を対象とした個別検証を組み合わせた検査設計が有効となる。リビール™ イムノクロマトキット マルチツリーナッツアレルゲンは、米国市場で流通頻度が高く交差接触リスクが問題となりやすい複数のナッツ類を一括でスクリーニングできる迅速検査であり、製造環境や洗浄工程の管理に適している。これに加え、表示上のリスクが高い特定のナッツ類については、ベラトックス™ ELISAキットシリーズによる個別ナッツ種の定量検証を組み合わせることで、米国の制度に即した表示適合性の裏付けを行うことが可能である。

4.3. 国外規制対応を見据えた検査体系構築の実務ポイント

国外規制に合致したアレルゲン検査体系を無理なく運用するためには、以下の点が重要となる。

  • 輸出先国・地域の義務表示対象を起点として検査項目を確定する
  • 工程管理や交差接触の予防には迅速検査法を用い、原材料・最終製品の確認には定量検査法を組み合わせる
  • 免疫学的アレルゲン検査法の対象外となる化学物質等については、別系統の分析手法を併設する
  • 過剰な検査負荷を避けつつ、表示違反や回収リスクを最小化する観点で検査体系を最適化する

ネオジェンジャパンの食物アレルゲン検査製品群は、これらの要件を踏まえた検査設計に柔軟に対応できるポートフォリオを有しており、輸出先国・地域の制度に適合した、実効性の高いアレルゲン管理体制の構築を支援する有力な選択肢となる。

5. 輸出先に合わせたアレルゲン検査体系の構築へ

各国のアレルゲン表示制度は、疫学データ、食習慣、科学的評価、リスク管理方針の違いを背景に形成されているため、義務表示対象や分類思想、PAL運用、閾値の考え方が一致しない。したがって、輸出においては国内基準のみで管理するのではなく、輸出先国・地域の制度要件を起点として検査項目と検証方法を設計し、表示適合性を裏付けることが重要となる。これにより、表示違反に起因するリコールや輸入停止といった事業リスクを低減できる。
ネオジェンジャパンは、工程内の交差接触リスクを迅速に把握できるリビール™ イムノクロマトキットシリーズおよびProtein Rapid™ イムノクロマトキットシリーズと、原材料・最終製品の定量検証に対応したベラトックス™ ELISAキットシリーズを通じて、輸出先規制に即した段階的なアレルゲン検査体系の構築を支援している。

著者:ネオジェンジャパン株式会社|公開日:2026年3月

輸出先規制に対応した食物アレルゲン検査設計や検査用製品の選定について、お気軽にご相談ください。

参考資料
  1. 消費者庁. 食品表示基準におけるアレルギー物質を含む食品の表示について. 2025.
    https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/250221_shiryou3.pdf
  2. 消費者庁. 加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック(令和6年3月一部改定版). 2023.
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_210514_01.pdf
  3. 消費者庁. アレルゲンを含む食品に関する表示について(令和6年3月28日 事務連絡). 2024.
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_240328_01.pdf
  4. 消費者庁. 第7回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議 資料2 特定原材料等の追加・削除について. 2025.
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms204_250120_003.pdf
  5. Codex Alimentarius. General Standard for the Labelling of Prepackaged Foods: CXS 1-1985. 1985.
    https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/sh-proxy/fr/?lnk=1&url=https%253A%252F%252Fworkspace.fao.org%252Fsites%252Fcodex%252FStandards%252FCXS%2B1-1985%252FCXS_001e.pdf
  6. 消費者庁. 食品表示基準について 別添 アレルゲンを含む食品に関する表示(平成27年3月30日消食表第139号)(最終改正 令和7年7月25日 消食表第637号). 2015.
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230629_02.pdf
  7. Australian Food and Grocery Council; Allergen Bureau. Food Industry Guide to Allergen Management and Labelling for Australia and New Zealand. 2024.
    https://allergenbureau.net/wp-content/uploads/2023/11/Food_Industry_Guide_to_Allergen_Management_and_Labelling_ANZ_2022_V3.pdf
  8. 厚生労働省. 食品表示研究班アレルギー表示検討会 中間報告 ― 食品表示が与える社会的影響とその対策及び国際比較に関する研究. 2001.
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2001/000191/200100875A/200100875A0002.pdf
  9. Food and Agriculture Organization of the United Nations; World Health Organization. Risk Assessment of Food Allergens: Part 3: Review and Establish Precautionary Labelling in Foods of the Priority Allergens. 2023.
    https://iris.who.int/server/api/core/bitstreams/880bc3ce-36e3-4208-b01f-74948b1d7530/content
  10. Food and Agriculture Organization of the United Nations; World Health Organization. Risk Assessment of Food Allergens: Part 1: Review and Validation of Codex Alimentarius Priority Allergen List through Risk Assessment. 2022.
    https://iris.who.int/server/api/core/bitstreams/6ff01ff9-7b8d-471f-bbf9-29915a6bb21f/content
  11. European Union. Directive 2003/89/EC. 2003.
    https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2003/89/oj/eng
  12. European Union. Regulation (EU) No 1169/2011. 2011.
    https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2011/1169/oj/eng
  13. U.S. Food and Drug Administration. Food Allergen Labeling and Consumer Protection Act of 2004 (FALCPA). 2004.
    https://www.fda.gov/food/food-allergensgluten-free-guidance-documents-regulatory-information/food-allergen-labeling-and-consumer-protection-act-2004-falcpa
  14. U.S. Food and Drug Administration. Food Allergy Safety, Treatment, Education, and Research Act of 2021. 2021.
    https://www.fda.gov/food/food-allergies/faster-act-sesame-ninth-major-food-allergen